Spatial mapping of hepatic ER and mitochondria architecture reveals zonated remodeling in fasting and obesity.
Güneş Parlakgül, et al.
Nat Commun. 15:3982. (2024). DOI: 10.1038/s41467-024-48272-7.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38729945/
代謝恒常性維持における細胞内構造制御の重要性が示唆されています。しかしながら、生理的な摂食・絶食サイクルにおいて、オルガネラが栄養状態に応じてどのように構造を制御し、恒常性を支えているかは不明なままでした。
著者らは最近、集束イオンビーム走査電子顕微鏡(FIB-SEM)と深層学習による自動画像セグメンテーションを利用した高解像度超微細構造イメージング手法を確立しました。今回著者らは、この手法を用いてマウスの摂食時と絶食時における肝細胞の細胞内構造を解析し、その制御機構の解明に取り組みました。摂食時と比較して絶食時の肝細胞はミトコンドリア数が少なく、ミトコンドリアの体積が増加していました。ミトコンドリアの形態は、丸みを帯びた状態から複雑な形状に変化していました。絶食時の肝細胞の小胞体は、摂食時の層状構造から一枚のシート状の構造に変化し、ミトコンドリアの周囲を覆っていました。特に、粗面小胞体とミトコンドリアが近接する領域が増加していました。肝細胞は肝小葉内の領域毎に特徴的な代謝・機能を示すことが知られています。絶食時に観察された変化は門脈周辺域と小葉中間帯で観察され、中心静脈周辺領域では認められませんでした。肥満モデルマウスでは、絶食による粗面小胞体とミトコンドリアの相互作用が抑制されていました。小胞体膜の形状と安定性に関与するタンパク質ribosome receptor binding protein 1(RRBP1)の欠損により、絶食に伴う小胞体とミトコンドリアの構造変化が抑えられ、脂肪酸酸化の低下と脂肪滴の蓄積が認められました。これらの結果から、粗面小胞体とミトコンドリアの相互作用が、肝細胞の代謝恒常性において重要な役割を果たしていることが明らかになりました。今後の老齢マウスや他臓器での解析が待たれるところです。
(文責:藤田泰典)