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編集委員会からのお知らせ:2023年1月号海外文献紹介

One-year aerobic exercise increases cerebral blood flow in cognitively normal older adults.

「1年間の有酸素運動は認知機能が正常な高齢者の脳血流を増加させる」

Tsubasa Tomoto, et al.
J Cereb Blood Flow Metab.
(2022). Online ahead of print.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36250505/

 運動は万能薬と言われており、認知症など加齢関連疾患に対する効果が期待されています。しかし、高齢者における認知機能や脳血流調節に対する運動の効果については証拠が不十分のようです。今月は、認知機能が正常な高齢者において1年間有酸素運動を継続した効果について報告した論文を紹介します。
 対象者は認知機能が正常な(MMSEスコアが26点以上)60-80歳で、高血圧や糖尿病などの基礎疾患がない人でした。対象者を有酸素運動群と対照群に分け、1年間の運動介入前後で心肺機能、循環機能、脳血流、認知機能などを計測・比較しました。有酸素運動群は25-30分の運動(最大心拍数の75-85%の強度)を週3回実施するのを基本とし、漸進的に運動回数および強度を増加させていきました。対照群は、四肢のストレッチ運動を週3回実施するのを基本とし、段階的に全身のストレッチや低強度のレジスタンス運動を加え、運動群と同様に運動回数を増やしていきました(運動は最大心拍数の50%未満で実施)。
 その結果、有酸素運動群では心肺機能の向上のほか、脳血流の増加、脳血管抵抗の低下、記憶機能の向上などを認めました。対象群では心肺機能や脳血流、脳血管抵抗に変化はありませんでしたが、有酸素運動群と同様に記憶機能が向上しました。なお有酸素運動群では、脳血管抵抗の変化と記憶機能の変化に負の相関を認めました(血管抵抗がより減少すると記憶機能がより向上)。したがって、著者らは有酸素運動が高齢者の脳血流調節を改善するとともに脳の健康に有用であると結論付けています。
 本論文で用いた有酸素運動は、対象が健常な人だったとはいえ非常に高強度だったため、8割近くの参加者が1年間も継続したことに驚きました(まさに、継続は力なり、ですね)。一方、低強度の運動習慣(対照群)でも継続することで記憶機能が向上したという結果は、激しい運動が難しい人にとって福音だと思いました。
(文責:渡辺信博)

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