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編集委員会からのお知らせ:2025年3月号海外文献紹介

Ergothioneine controls mitochondrial function and exercise performance via direct activation of MPST.

Hans-Georg Sprenger, et al.
Cell Metab.
S1550-4131 (25) 00024-5 (2025). DOI: 10.1016/j.cmet.2025.01.024.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39965563/

 「適切な食事と運動」、健康的に長生きするためにこの両者が欠かせないことは、多くの方々が理解していることと思います。今回紹介するのは、キノコ類に多く含まれるエルゴチオネイン(EGT)が、ミトコンドリア機能の向上と運動効率の上昇に働くことを報告した論文です。
 EGTは、キノコ類を筆頭に、黒豆、オーツブラン、スピルリナ等に含まれている希少アミノ酸で、哺乳類は合成することができません。そのため、私たちはEGTを食事から摂取する必要があります。また、EGTには強力な抗酸化作用があることが知られています。しかし、EGTの分子標的と作用機序についてはこれまで明らかにされていませんでした。
 まず筆者らは、ミトコンドリアが3×HAタグで標識されたMITO-Tagマウスを用いて免疫沈降(MITO-IP)を行い、筋肉中のミトコンドリアを採集しました。それらを用いてメタボローム解析を行った結果、4週間運動させたマウス群では、運動させていないコントロール群と比較して、筋肉中のミトコンドリアにEGTが多く蓄積していることを見出しました。そして、運動によるPGC1αの上昇が、EGTトランスポーターであるSlc22a4の発現を誘導し、筋肉におけるEGT量の上昇に寄与することを明らかにしました。次に著者らは、proteome integral solubility alteration (PISA)というプロテオーム解析手法を用いて、EGTが 3-メルカプトピルビン酸硫黄転移酵素(MPST)に直接結合し、ミトコンドリア機能を活性化することを見出しました。さらに、EGTを添加したエサを摂取したマウスは、より長い距離を走ることができるようになり、運動機能が向上していることを示しました。
 MPSTは、生体内で硫化水素(H2S)産生に関わる酵素であり、H2Sは低濃度であれば人体に有益であることが知られています。したがって、EGT摂取によるMPSTを介したH2S産生が、ミトコンドリア機能の向上に寄与したと考えることができそうです。EGT摂取がフレイル対策につながるかはまだ不明ですが、多種多様なキノコを日常的に摂取している(または購入できる環境にある)日本人には朗報な論文だと思います。
(文責:赤木 一考)

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