2019年9月 43巻3号 ![]() 3.6MB | 目次
(pdf
104KB) 第40 回日本基礎老化学会シンポジウム (pdf 982KB) 名誉会員寄稿文 『老いの遍歴』 森 望 (pdf 905KB) 特集企画「体温調節と生体恒常性維持」 (pdf 665KB) 総説 体温調節の脳機構と加齢による変容-特に温度感覚と行動性体温調節の観点から- 永島 計 (pdf 858KB) 総説 睡眠と体温調節能の老化変容における視床下部神経回路の役割 佐藤 亜希子、中村 和弘 (pdf 873KB) 総説 キイロショウジョウバエの代謝シグナルを介した飢餓条件での体温調節機構 梅崎 勇次郎 (pdf 1MB) 総説 哺乳類の冬眠〜低代謝と低体温による生存戦略 山口 良文 (pdf 846KB) ベストディスカッサー賞受賞者寄稿 第42 回日本基礎老化学会大会 学会見聞録 伊藤 孝 (pdf 747KB) ベストディスカッサー賞受賞者寄稿 第42 回日本基礎老化学会大会に参加して 津田 玲生 (pdf 731KB) 学生奨励賞受賞者寄稿 第42 回大会学生奨励賞を受賞して 久松 大介 (pdf 805KB) 学生奨励賞受賞者寄稿 第42 回大会学生奨励賞を受賞して 平尾 勇人 (pdf 786KB) 学生奨励賞受賞者寄稿 第42 回大会学生奨励賞を受賞して 王 梓 (pdf 787KB) 大会報告 第42 回日本基礎老化学会大会を終えて 石神 昭人 (pdf 969KB) |
2019年5月 43巻2号 ![]() | 第42回(2019年)日本基礎老化学会大会号 「健康長寿社会の実現を目指した老化制御研究」 5.8MB |
活性イオウ分子によるエネルギー代謝制御
西村 明1、本橋 ほづみ2、赤池 孝章1 1 東北大学 大学院医学系研究科 環境医学分野 2 東北大学 加齢医学研究所 遺伝子発現制御分野 システインパースルフィド(CysSSH)を代表とする活性イオウ分子は通常のチオール基に複数のイオウ原子が付加したポリスルフィド構造を有している化合物であり、通常のチオール化合物に比較すると多彩なレドックス活性を有している。最近、システイニルtRNA合成酵素(cysteinyl-tRNA synthetase: CARS)が、生体内の主要なCysSSH合成系であることが判明した。また、ミトコンドリア局在型CARS から産生されたCysSSHは、電子受容体およびプロトン供与体としてミトコンドリア膜電位形成に寄与し、新規エネルギー代謝経路「イオウ呼吸」を営み生命活動をコントロールしていることが明らかとなった。本稿では、活性イオウ分子の主要な生合成経路および新規エネルギー代謝経路「イオウ呼吸」に関して我々が得た最新の知見を紹介する。 キーワード:reactive sulfide species, cysteine persulfide, cysteinyl-tRNA synthetase, sulfur respiration, mitochondrial bioenergetics
酸化脂質の構造と生体への影響
加藤 俊治1, 2、伊藤 隼哉1、竹腰 進2、仲川 清隆1 1 東北大学大学院農学研究科・機能分子解析学分野 2 東海大学医学部・基礎医学系・生体防御学分野 酸化脂質の構造は極めて多岐にわたり、近年の目覚ましい質量分析の発展にともない、生体内の微量かつ複雑な酸化脂質の構造が次々に解明されてきている。酸化脂質の構造は生体内での生成経路(炎症反応や光照射など)に依存しており、構造によって生理機能が大きく異なることがわかってきた。ネガティブなイメージが強かった酸化脂質であるが、興味深いことに生体の恒常性維持に必須な酸化脂質も報告されてきている。また、脂質の酸化は分子の高極性化をもたらし、例えば膜リン脂質の分子動態にも大きく影響を与える。近年のコンピューターやNMRを用いた解析によれば、酸化による分子動態変化も恒常性維持に必須のようである。本総説では、特に酸化脂質の構造に着目し、脂質が酸化されることによって生ずる機能や性質の変化について概説する。 キーワード:Oxidized lipid, Mass spectrometry, Signal mediator, Molecular dynamics老年性筋疾患研究におけるiPS 細胞の利用とその有用性
脂質酸化依存的新規細胞死フェロトーシスとリポキシトーシス
今井 浩孝 北里大学 薬学部 衛生化学 近年、脂質酸化が起因となる新しい非アポトーシス経路による細胞死フェロトーシスが注目を集めている。フェロトーシス研究は現在、Ras変異がん細胞を特異的に殺す抗がん剤のメカニズムの解析が進んでおり、シスチントランスポーター(xCT)を抑制するタイプ1(エラスチンなど)と酸化リン脂質の一次生成物であるリン脂質ヒドロペルオキシドを直接還元する酵素GPx4(リン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ)を直接阻害するか、発現量を変化させるタイプ2(RSL3など)に大きく分けられる。タイプ1は細胞内グルタチオンの低下により、またタイプ2は直接GPx4を阻害することで、リン脂質ヒドロペルオキシドの代謝を抑制し、遊離二価鉄を介した脂質酸化増幅反応によりカスパーゼ非依存的な新規細胞死を誘導する。フェロトーシスは鉄のキレーターDFO(deferoxiamine)、ビタミンE、フェロスタチン−1により抑制されることが特徴であり、カスパーゼの阻害剤では抑制できない。一方、我々はこれまでに、GPx4の様々な組織特異的ノックアウトマウスにおいて、GPx4が正常組織で欠損すると、カスパーゼ非依存的で脂質酸化依存的な細胞死が起きることを見出し、その分子メカニズムや初期に酸化されるリン脂質分子種がフェロトーシスとも異なることを見出してきている(筆者らはリポキシトーシスと呼んでいる)。またミトコンドリアを経由するアポトーシスにおいても、以前我々を含めた複数のグループが、ミトコンドリア内の特異的リン脂質カルジオリピンの酸化がミトコンドリアからのチトクロームCの放出に関与することを報告している。このことは細胞死におけるリン脂質の酸化シグナルが、何処のオルガネラでどのようなリン脂質分子種に対して起きるのかによって、脂質酸化依存的な細胞死は異なる細胞死経路をたどることを示している。本総説では我々の視点からみたフェロトーシスとリポキシトーシスについて中心に紹介したい。 キーワード:GPx4, lipid peroxidation, iron, vitamin E, ferroptosis
鉄代謝とその制御
宮沢 正樹 東海大学 健康学部 健康マネジメント学科 鉄は酸素の運搬をはじめ、エネルギー産生、DNAの複製など生体や細胞の恒常性維持に必要不可欠なミネラルであり、ヘム鉄や鉄硫黄クラスターを活性中心としたタンパク質の重要な機能性分子である。鉄の欠乏は鉄欠乏性貧血をはじめとする栄養障害の原因となる一方で、過剰な鉄は酸化障害を誘発する活性酸素種の産生要因となり、老化の促進、発がんや腫瘍の悪性化を促すことが懸念されている。そのため、細胞内の鉄濃度は正常な生理機能を維持するために素早くかつ厳密に制御されなければならない。この鉄の代謝に関する研究はここ数年で多くの新たな発見があり、本稿では生体および細胞内の鉄調節機構の概説とマイクロRNAによる新たな鉄代謝制御を中心に紹介する。 キーワード:Iron metabolism, Ferritin, Transferrin receptor 1, Iron regulatory protein, miRNA Copyright © 2013 Japan Society for Biomedical Gerontology All Rights Reserved. |