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学会誌

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 学会誌「基礎老化研究」バックナンバー公開のお知らせ
     現在、1977年以降の発行分について全文、1977年第1巻~2016年第40巻3号の「基礎老化研究」
     ならびにシンポジウム「老化の基礎的研究」講演記録の1975年から1979年分 (第1回から第8回)
     pdfファイルにて公開しております。
     なお、現在2017~2015年分は学会員限定にて公開しております。

      

 投稿規程  この雑誌について

2016年


2016年9月
40巻3号



(学会員限定)
pdf
3.6MB
目次  (pdf 466KB)(学会員限定)
総説
 個体老化を左右する変幻自在な細胞;-学会の成長と未来研究に想いを馳せて-
 三井 洋司(pdf 1.4MB) (学会員限定)

特集企画「ストレスと老化・疾患」  (pdf 954KB) (学会員限定)

総説
 哺乳類ミトコンドリアゲノムの突然変異ががん化と老化に与える影響
 林 純一(pdf 1.2MB) (学会員限定)

総説
 酸化ストレスによる神経突起変性の誘因  福井 浩二  (pdf 1.1MB) (学会員限定)

総説
 ゲノムに蓄積した8-oxoguanine に起因する病態とその防御機構-発がんから神経変性まで-
 中別府 雄作(pdf 1.8MB) (学会員限定)

トピックス
 脂肪組織特異的CREG1 トランスジェニックマウスを利用した褐色脂肪化促進と生活習慣病改善の検討
 橋本 理尋、楠堂 達也、竹内 環、遠藤 優貴、山下 均  (pdf 1.5MB) (学会員限定)

トピックス
 Lactobacillus gasseri SBT2055 の寿命延長・抗老化作用メカニズムの解明 
 中川 久子、宮崎 忠昭 (pdf 1.5MB) (学会員限定)

トピックス
 ミトコンドリア病診断マーカーGDF15 の同定と老年医学への応用
 藤田 泰典 (pdf 1.5MB) (学会員限定)

大会報告
 第39 回日本基礎老化学会大会報告   石井 直明 (pdf 1.1MB) (学会員限定)

大会見聞録
 第39 回日本基礎老化学会大会に参加して   海野 けい子 (pdf 1.4MB) (学会員限定)

追悼文
 今堀和友先生とその時代    丸山 直記 (pdf 1.1MB) (学会員限定)


哺乳類ミトコンドリアゲノムの突然変異ががん化と老化に与える影響

林 純一
筑波大学

 老化ミトコンドリア原因説によると、加齢に伴いミトコンドリアゲノム(mtDNA)に後天的に蓄積する突然変異(体細胞突然変異)はミトコンドリアの呼吸活性低下を引き起こすため老化の原因になるという。さらにこの仮説では、老化のみならずがん化を含む老化関連疾患にもmtDNA の体細胞突然変異が関与しているというが、これらはすべて状況証拠の積み重ねの結論である。その後、mtDNA 複製酵素の校正機能を破壊したマウス(ミューテーターマウス)が作製され、mtDNA の体細胞突然変異が高頻度で誘発される結果、早期老化表現型を発現し短命であることが示された。これによってこの仮説はより強固なものとなり現在でも多くの研究者に支持されている。一方筆者らはこの仮説を検証するためmtDNA の細胞間移植や、高齢者由来の繊維芽細胞の初期化などを行った。その結果、少なくともヒト繊維芽細胞では加齢に伴うミトコンドリア呼吸活性低下はmtDNA の突然変異ではなく核ゲノムのゲノム修飾が原因であり、可逆的なプロセスであることを立証した。

キーワード:Human aging; Metastasis; mtDNA mutations; mtDNA exchange; Epigenetic regulation

酸化ストレスによる神経突起変性の誘因

福井 浩二
芝浦工業大学 システム理工学部 生命科学科分子細胞生物学研究室

 我々は、加齢に伴う認知機能の低下には、脳神経細胞での酸化傷害が関与していると想定し、そのメカニズムの解明に取り組んでいる。既知の様に、生体では加齢に伴い過酸化脂質が増加、培養細胞では酸化傷害により細胞死が起きる。よってこれらを防ぐためには、酸化傷害による神経細胞死が起きる前の早期変化が何であるかを見出すことが重要と考えている。我々の実験から、培養細胞では細胞が死なない低濃度の過酸化水素の添加により、神経細胞の突起上に数珠状の凝集物形成が生じていることが明らかとなった。また、この形態的変化は、初代培養系や老齢マウス、ビタミンE 欠乏マウスの脳でも生じていた。更に、細胞膜酸化や微小管変性、カルシウムホメオスタシスの崩壊の可能性が、我々のものを含め多数報告されている。以上より、加齢に伴う認知機能障害の一因には、脳神経細胞内での酸化傷害に起因する神経突起障害が関与している可能性が考えられる。

キーワード:Oxidative stress, Aging, Cognition, Axonal degeneration, Microtubules

ゲノムに蓄積した8-oxoguanine に起因する病態とその防御機構-発がんから神経変性まで-

中別府 雄作
九州大学 生体防御医学研究所

 8-oxoguanine は代表的な酸化塩基であるが、これまで自然突然変異の主要な原因として研究が進められてきた。細胞ゲノムへの8-oxoguanine の蓄積はヌクレオチドプールに生じた8-oxo-dGTP を分解するMTH1(MutT homolog-1) とDNA 中のcytosine に対合した8-oxoguanine を切り出すOGG1(8-oxoguanine DNA glycosylase)、鋳型DNA 中の8-oxoguanine に挿入されたadenine を切り出すMUTYH(MutY homolog)の3つの酵素によって低いレベルに保たれている。MTH1、OGG1、MUTYH 欠損マウスの解析から、8-oxoguanine の核ゲノムとミトコンドリアゲノムへの蓄積はMUTYH によって開始される塩基除去修復反応に依存して、2つの独立した細胞死の経路を活性化することが明らかになった。MUTYH に依存した細胞死はがん抑制機構の1つとして機能するだけでなく、ミトコンドリア機能障害による神経細胞死とミクログリオーシスを介して神経変性疾患の発症に関与する。

キーワード:MTH1, OGG1, MUTYH, Cancer, Neurodegeneration

2016年5月
40巻Supplement




プログラムのみ公開しております。

(学会員限定)
pdf 2.8MB


2016年5月
40巻2号



(学会員限定)
pdf 2.6MB
目次  (pdf 84KB) (学会員限定)

総説
 去りゆく老生化学者の老化研究軌跡と随想
 後藤 佐多良  (pdf 731KB) (学会員限定)

特集企画「栄養・代謝と老化」  (pdf 604KB) (学会員限定)

総説
 糖代謝シグナルを介した認知機能制御機構
 多田 敬典、徳永 暁憲、田之頭 大輔、倉田 栄子、田口 明子   (pdf 786KB) (学会員限定)

総説
 ショウジョウバエの寿命を制御する栄養と代謝
 相垣 敏郎  (pdf 673KB) (学会員限定)

総説
 SIRT7 の多様な代謝機能
 吉澤 達也、山縣 和也  (pdf 1.1MB) (学会員限定)

総説
 心不全や肥満、糖尿病における白色・褐色脂肪不全の意義
  清水 逸平、吉田 陽子、南野 徹  (pdf 798KB) (学会員限定)

総説
 老化における栄養・代謝の変化と内分泌系のクロストーク成長ホルモン・IGF-I の重要な役割
 高橋 裕
  (pdf 770KB) (学会員限定)

学会報告
 The 6th International Society of Radiation Neurobiology に参加して
 内田 さえ   (pdf 839KB) (学会員限定)

学会報告
 第11 回長寿医療研究センター国際シンポジウム
 下田 修義   (pdf 794KB) (学会員限定)

追悼文
 竹田俊男先生を偲んで  細川 昌則   (pdf 699KB) (学会員限定)

去りゆく老生化学者の老化研究軌跡と随想

後藤 佐多良
順天堂大学大学院 スポーツ健康医科学研究所

 私は大学院時代から数えると半世紀近く老化研究に関わってきた。昔、自分で書いたものを読み返すと、基本的にはその後ほとんど進歩がないことが分かる。それでも、エラー カタストロフ説・異常タンパク質・代謝回転・老化介入と項目を立てて研究軌跡を辿ってみた。すべてタンパク質の視点から老化を見たものである。幾つかの重要な視点が抜けていて、我田引水と偏見にとらわれているとのそしりを免れないだろうが、老研究者の一例報告としてご批判、ご参考にして頂ければ幸いである。

キーワード:老化メカニズム、エラー カタストロフ説、異常タンパク質、代謝回転、食餌制限、定期的運動

糖代謝シグナルを介した認知機能制御機構

多田 敬典1、徳永 暁憲1、田之頭 大輔1、倉田 栄子2、田口 明子1,2
1国立長寿医療研究センター統合加齢神経科学研究部
2宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野

 これまで認知機能研究は、中枢神経系を中心とした解析が行われ、その結果をもとに多くの認知症治療薬候補が開発されてきた。しかしながら、現在のところ認知症に効果を示す本質的な治療薬は得られていない。近年、末梢組織を中心に研究が行なわれてきた代謝の変容が、認知機能にも影響をおよぼすことが明らかとなってきた。これらの背景から、代謝経路を介した新たな認知症治療薬・診断薬開発の可能性に関心が高まっている。本稿では、エネルギー代謝や栄養の恒常性を調節するインスリン様シグナルの中枢神経系における変化が、認知機能にどのような影響を及ぼすのか、我々の研究成果を含め、最新の知見を紹介する。

キーワード:認知機能障害、アルツハイマー病、糖尿病、インスリン様シグナル、代謝

ショウジョウバエの寿命を制御する栄養と代謝

相垣 敏郎
首都大学東京 大学院理工学研究科 生命科学専攻

 一般に大型の生物種ほど平均寿命や最大寿命が長く、代謝速度と寿命の関連が示唆されている。また、適度な食餌制限や遺伝的変異によって寿命の延長が起こる。食餌制限による寿命延長機構については未だ不明な部分も多いが、遺伝的変異によるものではインスリン/ インスリン様成長因子1(IGF1)/TOR シグナルに関連するものが代表的である。ショウジョウバエは、成長、老化、寿命といった複雑な生命現象を分子レベルで解明するためのモデルシステムとして利用されている。特に、インスリン/IGF1/TOR シグナルについては、体や器官の大きさを制御する主要な経路として、また寿命の制御因子として多くの知見が蓄積している。本稿では、体の大きさと寿命を制御する機構と、栄養がこれらの形質に及ぼす影響について、ショウジョウバエを用いた研究の進展を紹介する。

キーワード:ショウジョウバエ、寿命、栄養、代謝

SIRT7 の多様な代謝機能

吉澤 達也、山縣 和也
熊本大学 大学院生命科学研究部 病態生化学分野

 サーチュイン(哺乳類ではSIRT1-7)はNAD 依存性脱アシル化酵素として働き、代謝・がん・老化などに関与する重要な因子である。我々は、Sirt7 ノックアウト(KO)マウスでは、高脂肪食で誘導される肥満、脂肪肝、糖尿病が野生型マウスに比べて軽減することを発見した。肝臓では、SIRT7 がユビキチンリガーゼ複合体に結合することでTR4(脂質代謝に重要 な核内受容体)タンパク質の分解を抑制し、その結果としてTR4 標的遺伝子の活性化を介して脂肪酸取り込みとトリグリセリド合成/ 貯蔵を増加させることを証明した。さらに我々は、Sirt7 KO マウスは体温が高く、褐色脂肪組織において熱産生遺伝子群の発現が上昇していることを見出しており、褐色脂肪組織におけるエネルギー代謝においてもSIRT7 が重要であると考えられた。この研究により、SIRT7 が糖脂質エネルギー代謝調節に重要な役割を果たしていることが示された。

キーワード:サーチュイン、肥満、脂肪肝、糖尿病、エネルギー代謝動

心不全や肥満、糖尿病における白色・褐色脂肪不全の意義

清水 逸平1,2、吉田 陽子1,2、南野 徹1
1新潟大学大学院医歯学総合研究科 循環器内科学
2新潟大学大学院医歯学総合研究科 先進老化制御学講座

 肥満や糖尿病、心不全の病態が、内臓脂肪組織における細胞老化反応を介した脂肪炎症と全身のインスリン抵抗性(高インスリン血症)により増悪することがわかってきた。インスリンシグナルの抑制は寿命延長効果があるが、心不全に伴う高インスリン血症により心臓のインスリンシグナルが過剰となり、病的心肥大が進行し心不全が増悪することもわかった。褐色脂肪組織は熱産生器官という側面に加え、活発な代謝臓器として注目されているが、肥満ストレス下では低酸素状態となり、褐色脂肪が「白色化」し機能不全となることで全身の代謝障害が生じることもわかった。白色脂肪や褐色脂肪の恒常性を制御することは、肥満や糖尿病、心不全といった老化関連疾患の病態を抑制する上で重要である。

キーワード:p53、cellular senescence、adipose aging、BAT whitening、systemic insulin resistance

老化における栄養・代謝の変化と内分泌系のクロストーク成長ホルモン・IGF-I の重要な役割

高橋 裕
神戸大学大学院医学研究科 糖尿病内分泌内科学

 成長ホルモン(GH)とIGF-I は個体の成長だけではなく代謝、栄養調節において重要な役割を果たしている。加齢に伴うGH、IGF-I 分泌低下はSomatopause と言われ老化現象の一部に寄与している。一方、GH, IGF-I 作用が低下するとマウス以下の動物では寿命が延長することから、老化、寿命調節にも重要な役割を果たしている。また低栄養になるとGH 分泌が亢進する一方、IGF-I 濃度は低下し、GH 抵抗性と呼ばれる状態が引き起こされるが、これは飢餓状態における成長から生存を目指した適応反応の一部でありその機序も明らかになってきた。50-65 歳における高蛋白食はIGF-I 上昇と関連して糖尿病、悪性腫瘍のリスクを高め死亡率が上昇する一方、65 歳以上ではむしろ低蛋白食が悪性腫瘍リスクと死亡率の増大を認め、年齢によって栄養、IGF-I の寿命影響が異なることが報告された。本稿ではGH/IGF-I と栄養、老化、寿命調節の関連について述べる。

2016年1月
40巻1号



(学会員限定)
pdf
4.8MB
目次  (pdf 600KB)(学会員限定)

巻頭言
 下川 功  (pdf 563KB) (学会員限定)
 
総説
 私の基礎老化研究   廣川 勝昱 (pdf 1.1MB) (学会員限定)

特集企画「サテライト細胞とサルコペニア」によせて (pdf 603KB) (学会員限定)

総説
 骨格筋再生と老化制御:筋サテライト細胞の役割 
 町田 修一、船越 智子 (pdf 1.3MB) (学会員限定)

総説
 サテライト細胞と細胞極性
 瀬古 大暉、小川 静香、小野 悠介 (pdf 1.2MB) (学会員限定)

総説
 マイオカインによるサテライト細胞の制御機構
 古市 泰郎、藤井 宣晴 (pdf 993KB) (学会員限定)

総説
 G-CSF による骨格筋再生  湯浅 慎介(pdf 1.2MB) (学会員限定)

考察
 「筋サテライト細胞除去と骨格筋量に関する論文の考察」
  -筋サテライト細胞の新たな可能性を探る-
  本橋 紀夫 (pdf 798KB) (学会員限定)

シンポジウム報告
 第37 回日本基礎老化学会シンポジウム報告  樋口 京一 (pdf 1.2MB) (学会員限定)

大会見聞録
 第10 回アジア・オセアニア老年学会議に参加して 
 加賀美 弥生 (pdf 1.6MB) (学会員限定)

学会報告
 Biology of Ageing Scientific Conference
 杉本 昌隆 (pdf 722KB) (学会員限定)

専門書紹介
 「Aging Mechanisms:Longevity, Metabolism, and Brain Aging」
 森 望 (pdf 854KB) (学会員限定)


 基礎老化学会サーキュラー 第104号 (pdf 645KB) (学会員限定)


私の基礎老化研究

廣川 勝昱
東京医科歯科大学名誉教授 東京医科歯科大学オープンラボ健康ライフサイエンス

 著者の老化に対する基本的な考え方は、個体老化が中心にあるが、細胞老化やモデル生物を使った研究も有用でかつ面白く、どんなモデルでも使う立場にある。老化研究に至る道筋として、学生時代から留学、 老人研、大学の各時代の体験を述べ、基礎老化研究の一部である老化と免疫の研究に至る経緯を述べた。免疫系は自然免疫や獲得免疫からなるが、その老 化のプロセスは胸腺を中心とする獲得免疫系を中心に起こることを要約した。次に現在取り組んでいるヒトの免疫機能の定量的測定法について紹介し、この免疫力測定法が、ヒトの健康維持や疾病の予後予測に有用であること、及びヒトにおける免疫力の加齢変化がヒトの寿命や疾患の発生に深く関わることを述べた。終わりに、これからの老化研究では、皆が、必ずしも老化を真正面にとらえる必要はなく、いろいろな生物学・医学の研究に関わる多くの研究者が老化という視点を持つことが必要である事を強調した。

キーワード:老化、免疫、研究領域の選択、免疫機能の定量的測定法、加齢に伴う疾患

骨格筋再生と老化制御:筋サテライト細胞の役割

町田 修一、船越 智子
順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科

 加齢に伴い骨格筋の筋肉量および筋力は低下する。しかし、この加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)がどのような機序で発症するかについてはよく知られていない。骨格筋は再生能力の高い組織と考えられているが、加齢に伴い筋再生能は低下する。近年、骨格筋の再生において中心的な役割を担う骨格筋幹細胞である筋サテライト(衛星)細胞の機能変化について興味深い報告がなされている。本稿では、骨格筋の再生における筋サテライト細胞の役割と機能の加齢変化に焦点をあて、サルコペニアの機序について概説する。


サテライト細胞と細胞極性

瀬古 大暉、小川 静香、小野 悠介
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 原爆後障害医療研究所 幹細胞生物学研究分野

 骨格筋は生体の中でも極めて可塑性に富んだ組織であり、過度の身体活動によって筋損傷しても数週間で修復・再生される。筋修復・再生には、サテライト細胞とよばれる骨格筋の組織幹細胞が重要な役割を担う。サテライト細胞は筋線維と基底膜の間にニッシェを形成して存在する。近年の研究により、このニッシェは、活性化したサテライト細胞の極性を誘起し、細胞極性因子を介してサテライト細胞の非対称分裂や運命決定に大きく影響を与えることが分かってきた。本総説では、サテライト細胞の運命決定における細胞極性因子の機能について、最新知見を概説する。


マイオカインによるサテライト細胞の制御機構

古市 泰郎、藤井 宣晴
首都大学東京 人間健康科学研究科 ヘルスプロモーションサイエンス学域

 体性幹細胞である筋サテライト細胞は、生後の骨格筋の成長、再生、および肥大を担っている。通常は休止状態にあるサテライト細胞は、筋損傷時に活性化して増殖し、筋細胞に融合することで筋の修復を行う。この過程で、一部の細胞は自己複製して休止状態に戻り、未分化状態のサテライト細胞が維持されている。このような筋再生時におけるサテライト細胞の振る舞いは、外部からの刺激因子によって調節されていることが分かってきた。近年、骨格筋細胞からホルモン様物質が分泌されることが明らかにされ、それらは総称してマイオカインと呼ばれている。筋細胞は損傷すると成長ホルモンやサイトカインを放出し、それらは実際にサテライト細胞の活性化や増殖促進などの効果を生んでいる。また、サテライト細胞の機能に影響を与えるマイオカインの中には、加齢によって産生量が変化するものがあり、骨格筋の再生能低下や筋量減少との関連性が示唆されている。本稿では、骨格筋の再生能に影響を与えるマイオカインとその作用機序について紹介する。

キーワード:分泌、筋形成、筋再生、加齢

G-CSF による骨格筋再生

湯浅 慎介
慶應義塾大学医学部 循環器内科

 顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte-colony stimulating factor;G-CSF)受容体はマウス胎仔骨格筋前駆細胞や成体骨格筋再生過程に発現する。骨格筋損傷後にG-CSF 受容体は再生骨格筋細胞に発現し、G-CSF 投与により骨格筋再生が促進される。成体の骨格筋幹細胞である筋衛星細胞は通常は静止期にあるが筋損傷後には活性化し筋再生する。活性化衛星細胞においてG-CSF 受容体は不均等に発現分布しており、G-CSF 添加やG-CSF 受容体欠損マウスの解析において、G-CSF は筋衛星細胞の長期維持に重要な役割を担っている。デュシェンヌ型筋ジスロフィーは、慢性筋傷害により病初期には筋衛星細胞の活性化により筋再生が起こるが、再生を繰り返した筋衛星細胞は徐々に老化・疲弊して筋再生が低下して病状が悪化する。筋ジストロフィーモデルマウスにおいて、長期G-CSF 投与は長期の筋再生を促し治療効果を呈する。これらよりG-CSF は筋衛星細胞に直接作用し筋損傷後の筋再生を調節している。

キーワード:Muscle, Satellite cell, G-CSF, Muscular dystrophy