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学会誌

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2003年9月
27巻3号



pdf 全体
4141KB
目次
巻頭言:「役に立つ」基礎老化学研究  丸山直記 (pdf 62KB)
第25回日本基礎老化学会シンポジウム
Program Abstracts (pdf 959KB)

総説:老化は測れるか? ーヒトの生物学的年齢の推定ー  中村栄太郎 (pdf 735KB)
総説:テロメア再訪ー染色体インテグリティとストレス、老化の接点  松浦彰  (pdf 414KB)
総説:アルツハイマー病のワクチン療法  原英夫 (pdf 434KB)
海外事情:UK-Japan Conference Horizons in Aging and Health- New Targets for Therapies (pdf 310KB)
参加記  磯部健一  (pdf 132KB)

老化は測れるか? ―ヒトの生物学的年齢の推定―

中村榮太郎
京都大学大学院人間・環境学研究科 認知・行動科学講座

要約
抗老化を目的とした介在研究の効果を判定するためには、老化の指標としての生物学的年齢 の発展が必要不可欠である。しかし未だ、標準化された老化の尺度は工夫されていない。この論 文は、老化の指標としての生物学的年齢の発展の歴史を概説すると共に、その推定方法の持つ 問題点を明らかにする。Costa & McCrae が指摘するように、現在迄に発表された生物学的年齢 の推定式は、いずれも妥当性および信頼性を欠くと考えられる。問題解決のためには、縦断的デ ータに基づいて次の3点、・老化のバイオマーカーの選択の基準、・1次的老化因子の存在の確 認、・重回帰モデルに代わる統計モデルの開発、の検討が必要である。そこで、最近発表された 関連論文がこれらの3つの問題点をどの程度明らかにし、新たな生物学的年齢の推定法を考案 してきたかについて検証した。

キーワード: aging, biological age, biomarker, statistical model

テロメア再訪-染色体インテグリティとストレス、老化の接点

松浦 彰
国立長寿医療研究センター・老年病研究部

要約
replicative senescence が個体・組織レベルの老化にどの程度寄与しているかについては未だ 不明である。しかし、最近テロメアの機能異常と疾病との関連が明らかになりつつある。本総説で はゲノムに対するストレスの作用点としてのテロメアに再注目し、染色体インテグリティと疾病、老 化との関係、早期老化症原因タンパク質の関与について議論する。

キーワード: telomere, replicative senescence, oxidative stress, chromosome integrity,ataxia telangiectasia

アルツハイマー病のワクチン療法

原 英夫
国立精神神経センター神経研究所疾病研究第6部室長
国立療養所中部病院長寿医療研究センター併任研究員

要約
アルツハイマー病に対するワクチン療法は、Schenk らが、前凝集 A___ペプチドをアジュバントと 共にPDAPP トランスジェニックマウスに投与し、脳アミロイド沈着が減少したという報告より始ま る。その後、アルツハイマー病患者への臨床治験(AN-1792)が開始されたが、phase II trial で、 6%の患者に髄膜脳炎の副作用が起こり、1名の死亡例も報告され、治験は中止された。ここで は、ワクチン療法の種類と免疫学的機序、およびワクチンによる脳の病理学的変化と副作用つ いて考察した。さらに、我々が開発したアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いたアルツハイマ ー病に対する経口ワクチン療法について解説を行った。

キーワード:アミロイドベータペプチド、抗体、APP トランスジェニックマウス、老人斑


2003年5月
27巻2号



pdf 全体
6422KB
【第一部】
日本基礎老化学会第26回大会(Japan-Korea Gerontologists Joint Program)
第23回日本老年学会総会 併催
 大会案内及びプログラム (pdf 2438KB)
 発表抄録 (pdf 2919KB)

【第二部】 (pdf 1166KB)
総説
Klotho遺伝子によるproteolysisの制御と老化
萬谷 博、遠藤 玉夫

附:基礎老化学会サーキュラー 第61号

Klotho 遺伝子によるproteolysis の制御と老化

萬谷 博、遠藤 玉夫
東京都老人総合研究所 糖蛋白質研究グループ

要約
Klotho マウスは寿命が短く、ヒトの老化症状に類似した多彩な症状を示すことから早期老化モ デルマウスとして位置づけられている。このことから、Klotho 遺伝子及び遺伝子産物の機能を解 析することにより老化及び老化に伴う病態の分子機構を解明するための重要な知見が得られる ことが期待される。筆者らは、Klotho 遺伝子の変異による各臓器の蛋白質レベルでの変化を解 析し、変異マウスの肺と腎臓で αII-spectrin が著しく分解されていることを明らかにした。 αII-spectrin はcalpain によって分解されることが報告されているので、Klotho マウスにおける calpain の活性化について検討した。その結果、変異マウスの肺と腎臓ではμ-calpain がほぼ完 全に活性化されており、calpain の内在性阻害物質であるcalpastatin が消失していた。さらに、同 様の傾向が自然老化マウスでも観察されたことから、Klotho 蛋白質の減少を起因とする一連の 蛋白質分解反応が自然老化における腎障害等に関与する可能性が示唆された。

キーワード:klotho, calpain, calpastatin, spectrin, calcium homeostasis


2003年3月
27巻1号



pdf 全体
4988KB
<巻頭言>
後藤佐多良 (pdf 84KB)
<日本基礎老化学会25年の歩み> (pdf 284KB)
<日本基礎老化学会創立25周年に寄せて> (pdf 1390KB)
基礎老化学会あれこれ 今堀和友(元日本基礎老化学会会長)
老化研究の昔と今 鈴木之(元日本基礎老化学会会長)
基礎老化研究の飛躍を期待して 三井洋司(日本基礎老化学会理事)
基礎老化研究に思うこと 細川昌則(日本基礎老化学会理事)
日本基礎老化学会と日本老年医学会の連携 佐々木英忠(日本老年医学会会長)
基礎老化学会に期待する 本間 昭(日本老年社会科学会会長)
老年学の発展のために、歩みを共に 松下正明(日本老年精神医学会理事長)
日本基礎老化学会創立25周年を記念して 稲葉繁(日本老年歯科医学会理事長)
The Global Challenge to Biogerontology George Roth, Ph.D.Aging Research:
A Challenge to Science aociety Byung Pal Yu, Ph.D.Biomedicalogy in Japan as the Paradigm and for the Next Society :
A Personal View. Sang Chul Park, M.D.Biomedcal Gerontology in Japan as Observed by a Red-Headed stranger Dick L. Knook, Ph.D.

<総説>
老化の突然変異説の現状  小野哲也 (pdf 417KB)
ストレスと老化 磯部健一、城川哲也 (pdf 694KB)
<研究紹介>
SMP30ノックアウトマウス -新しい老化モデルマウスとしての可能性-
石神昭人、丸山直記 (pdf 627KB)
酸化的ストレスおよび老化による認識機能障害について
福井浩二、新海正、鈴木捷三、阿部皓一、浦野四郎 (pdf 550KB)
<トピックス>
細胞寿命起源論 高木由臣 (pdf 235KB)
<海外事情>
米国における老化研究の動向 下川功 (pdf 395KB)

老化の突然変異説の現状

小野哲也
東北大学大学院医学系研究科細胞生物学講座ゲノム生物学分野

要約
DNA の変化(変異)が時間と伴に蓄積し遺伝情報が乱れることにより細胞の機能が変化したり あるいは死ぬことが老化の原因であるとする突然変異仮説は古くから存在し、また単純で考えや すい。近年の研究から細胞内のDNA は内的及び外的要因により日常的に損傷を受けていること、 それに対し細胞は100 種以上の修復酵素を用意して常に傷を治しているといういわば動的平衡 状態にあることが分かってきた。ただしその修復機構は正確さの高いものもあれば不正確なもの もある。一部の傷は修復されないまま残されることもあると考えられる。つまりDNA 変異は損傷 の量だけでなく修復の能力と質に左右される。このDNA 修復の能力と質はゲノムにプログラムさ れたものであり、種に特異的である。従ってどのような修復プログラムをもつとヒトのような長い寿 命が保障されるのかがひとつの課題となる。本稿では老化の突然変異説の検証がどの程度進 んでいるかについて現状を紹介する。

キーワード:DNA、突然変異、老化、DNA 損傷、DNA 修復

SMP30 ノックアウトマウス-新しい老化モデルマウスとしての可能性-

石神 昭人、丸山 直記
東京都老人総合研究所 加齢臓器障害研究グループ

要約
SMP30 (Senescence Marker Protein-30/加齢指標蛋白質30)は、ラット肝臓のプロテオーム解 析により加齢に伴い著しく減少する蛋白質として発見された。SMP30 は、血球系の細胞を除く殆 ど全ての臓器で発現し、その遺伝子は枯草菌や酵母などの下等生物からヒトに至るまで存在す る。また、アミノ酸配列は、高等生物において高度に保存されており、SMP30 が生物学的に重要 な機能を持つことを示している。我々は、加齢に伴うSMP30 の減少が臓器障害や加齢疾患の発 症にどのように関与しているかを明らかにするため、SMP30 ノックアウトマウス(SMP30-KO)を作 製した。このマウスは、正常に生まれて外見的には特に異常は認められないが、衰弱を伴い早 期に死亡する。また、SMP30-KO マウス由来の細胞や個体は、TNF-α や抗Fas 抗体誘導性ア ポトーシスに対して非常に感受性が高かった。SMP30-KO マウスは、様々な外的・内的ストレス に対して細胞や臓器が抵抗しうる閾値が低下している。SMP30-KO マウスは、新しい老化モデル マウスとなりうる可能性がある。

キーワード:apoptosis, knockout, plasma membrane calcium pump, proteome, SMP30, TNF-α

酸化的ストレスおよび老化による認識機能障害について

福井浩二1)、新海 正2)、鈴木捷三2)、阿部皓一3)、浦野四郎1)
1)芝浦工業大学 生物化学、2)東京都老人総合研究所、3)エーザイ(株)・ビタミンE 技術室

要約
従来より我々は、加齢及び酸化的ストレスが認識機能に及ぼす影響について検討を重ねてき た。一方で近年、アルツハイマー病などの脳神経系の疾患に対し、酸化的ストレスの関与が示唆 され始めた。アルツハイマー病における代表的な症状も認識機能障害であることから、そのメカ ニズムについて検討することは、これらの疾病の予防、治療の面からも非常に重要であると考え る。そこで本研究では、ラットを用いて行動実験を行い、加齢及び酸化的ストレスの負荷が認識 機能に及ぼす影響について検討した。更に、免疫組織染色により認識機能に特に重要な部位と される海馬領CA1 領域における酸化傷害についても同時に検討を行った。その結果、加齢に伴 う迷路課題での認識機能の減衰の要因の一つに、海馬領CA1 領域での酸化傷害が関与してい るであろう事が示唆された。また、これらの傷害が遅延性で誘引されることも明らかとなった。こ れらの傷害は、抗酸化物質であるビタミンE の投与で改善し、欠乏で亢進した。以上の結果は、 加齢及び酸化的ストレスの負荷により生ずるであろう認識機能障害が、活性酸素由来であること を示すと共に、老化のフリーラジカル説を強く支持するものである。

キーワード:Cognitive function, Maze task, Hippocampus, Apoptosis, β-Amyloid

細胞寿命起源論

高木由臣
奈良女子大学理学部生物科学科

1.はじめに
老化とは何か、寿命とは何か、と考えるようになっておよそ30 年になる。私の場合は、研究材 料である原生生物ゾウリムシの視点からこの問題を考えてきた。折々に書いた老化・寿命にまつ わる問題についての自身の論考を読み直してみて、内容は少しずつ深まり広がってきたとは思 えるものの、その歩みのあまりの遅さに愕然とする。ただ、若干誇りに思えるのは、コト細胞寿命 の起源論については、私の仮説に代わる説得力のある論考は目下どこにも見当たらないという ことである。 「基礎老化研究」誌に初めて総説1)を書かせていただいたのは1983 年で、今読み直すと他人 の褌で相撲を取っていたという印象を拭えない。しかし6 年後の二度目の総説2)では、私見を大 胆に披瀝していて、今読んでもこれといって改変の必要を感じない。ここで提出した仮説をゾウリ ムシで試す実験を開始し、ささやかながら励みとなる成果が得られたことを機に、単行本3)の形 で一般向けに公開し、和文の総説4,5)も書いた。勧めてくれる方がいて、英文総説6)でも私見を 披露した。このたび編集幹事の近藤さんから、トム・カークウッドの訳書7)が出版されたのを機に 「彼の"使い捨てのからだ老化理論"と対比しながら高木さんの考えを述べてみませんか」という 過分のお声掛りをいただいた。ご期待には応えられそうにないが、カークウッドの本を読む楽しみ と、「基礎老化研究」誌に三度目の記事を書かせていただく幸運を逃す手はないと、お引き受けし た次第である。トピックス欄を使わせていただくのは、理論に関する議論が基礎老化学会のトピッ クスになってくれれば、との願望によるものである。