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編集委員会からのお知らせ

 海外文献紹介2019年1月号

Functional aspects of meningeal lymphatics in ageing and Alzheimer’s disease.
「加齢およびアルツハイマー病における髄膜リンパ管の機能的側面」

Sandro Da Mesquita et al.
Nature.
560: 185-191 (2018).

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30046111

 リンパ管には間質液中の水分やタンパク質・老廃物などを血液循環に戻すという重要な役割があります。脳組織で生じた代謝産物は脳脊髄液を介して血液循環に排導されますが、これまでのところ、脳実質中には体の他の部位で認められるようなリンパ組織は見つかっておりません。近年、脳周囲に位置する髄膜(ただし、脳実質ではない)のリンパ管が、脳脊髄液の排出経路として寄与することが報告され、髄膜リンパ管の役割について注目されているようです。今月は、頭蓋内の髄膜リンパ管が脳脊髄液の排出を介して認知機能の維持に重要な役割を担うことを報告した論文を紹介させていただきます。
 まず本論文で著者らは、マウスの髄膜リンパ管にレーザー照射または外科的に結紮してリンパ管を傷害すると、脳脊髄液の流動が低下すること、恐怖記憶や空間学習・記憶が障害されることを示しました。続いて、老齢マウス(
20-24ヶ月齢)と若齢マウス(2-3ヶ月齢)を比べて髄膜リンパ管の加齢変化を検討したところ、脳脊髄液の流動およびリンパ管を介した脳脊髄液の排出は老齢マウスで低下していました。さらに老齢マウスの髄膜リンパ管は、直径が細く、分布が粗であること、そして髄膜リンパ管の新生成長因子に関わる遺伝子発現が低下していました。そこで著者らは、VEGF-C(血管内皮成長因子-C)が髄膜リンパ管の径を増大させるという著者らの先行研究を基に、AAV1ベクターでVEGF-Cを老齢マウスに発現させたところ、脳脊髄液の排出が増加し、空間記憶学習が向上することを明らかにしました。さらにVEGF-Cをハイドロゲルに添加して、経頭蓋的に作用させても類似の効果が認められました。著者らはさらにアルツハイマー病(AD)における髄膜リンパ管の変化について検討したところ、脳脊髄液の排出は、3ヶ月齢のADモデルマウスと同腹野生型マウスとで違いはないものの、ADモデルマウスの髄膜リンパ管を傷害すると、脳内のタンパクの蓄積が増悪し、マクロファージの浸潤が増加することを見出しました。
 本論文では、頭蓋内の髄膜リンパ管に着目して研究が展開されておりますが、脳脊髄液は、嗅神経鞘や硬膜-脊髄神経根の移行部からリンパ管を介して排導されることも知られております。同論文で報告されている加齢・病態時の変化が、頭蓋以外の部位でも生じるのか興味がわきました。

(文責:渡辺信博)

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